数の並びのグループ分けと和
― 規則性・三角数・和の工夫 ―
問題
次のように数を並べます。
1 1 2 1 2 3 1 2 3 4 1 2 3 4 5 ……
このとき、上から20段目までに書かれている数の和を求めなさい。
この数列は「グループ」に分けて読む。
第1グループ:1(1個)
第2グループ:1・2(2個)
第3グループ:1・2・3(3個)
第4グループ:1・2・3・4(4個)……
つまり「第k段」は、1から k までの整数を並べた k 個のグループ。
通常解説
ステップ① 構造を整理する
第k段には「1・2・3・…・k」が並んでいます。
第k段の和 = 1+2+3+…+k = k×(k+1)÷2
| 段 | 並ぶ数 | 個数 | 段の和 | 計算 |
|---|---|---|---|---|
| 第1段 | 1 | 1個 | 1 | 1×2÷2 |
| 第2段 | 1 2 | 2個 | 3 | 2×3÷2 |
| 第3段 | 1 2 3 | 3個 | 6 | 3×4÷2 |
| 第4段 | 1 2 3 4 | 4個 | 10 | 4×5÷2 |
| 第5段 | 1 2 3 4 5 | 5個 | 15 | 5×6÷2 |
| … | … | … | … | … |
| 第k段 | 1 2 … k | k個 | k×(k+1)÷2 |
ステップ② 20段分の和を求める(正攻法)
= 1 + 3 + 6 + 10 + 15 + 21 + 28 + 36 + 45 + 55
+ 66 + 78 + 91 + 105 + 120 + 136 + 153 + 171 + 190 + 210
1+3+6+10+15
+21+28+36+45+55
= 220
66+78+91+105+120
+136+153+171+190+210
= 1320
ステップ③ 「差し引き法」による速算(別の求め方)
「k×(k+1)×(k+2)÷6」という数を計算してみます。
これは3つの連続する整数の積を6で割ったものです。
k=1のとき:1−0 = 1(=第1段の和)
k=2のとき:4−1 = 3(=第2段の和)
k=3のとき:10−4 = 6(=第3段の和)
k=4のとき:20−10 = 10(=第4段の和)
k=5のとき:35−20 = 15(=第5段の和)
「k×(k+1)×(k+2)÷6 の差」が第k段の和にぴったり一致する!
第1段の和 =(k=1の値)−(k=0の値)
第2段の和 =(k=2の値)−(k=1の値)
……
第20段の和 =(k=20の値)−(k=19の値)
すべて足すと、途中の数が次々と打ち消し合って、 最後の「k=20の値」だけが残ります!
20×21×22÷6 = 9240÷6 = 1540
第1段の和 = 4 − 1
第2段の和 = 10 − 4
第3段の和 = 20 − 10
…
第20段の和 = 1540 − 1330
足すと「青い数」と「赤い数」が順番にペアになって消えていきます。
残るのは最初の「−1(k=0の値)」と最後の「+1540(k=20の値)」だけ。
答え = 1540 − 0 = 1540
(k=0 のとき 0×1×2÷6=0 なので引く部分は0)
初見での考え方
「1 1 2 1 2 3 …」→ 区切り目が見えるか?と即座に問う。
グループ分けで読むと「第k段 = 1〜k の数列」とわかる。
「グループ番号がそのまま最大値になっている」のが最重要の観察ポイント。
第k段の和 = k×(k+1)÷2 とすぐ書く。
この形を見た瞬間に「三角数だ」と認識できると、
「三角数の和 = 差し引き法で求められる」という知識につながる。
方法A:直接20個の三角数を全部足す(計算量多いがミスなし)
方法B:差し引き法で一発計算(速いが仕組みの理解が必要)
開成本番では、方法Bを使える人が圧倒的に有利。
「k(k+1)÷2 を差として持つ式はないか?」と考える。
3つの連続整数の積 k(k+1)(k+2) を6で割ると、
差が丁度 k(k+1)÷2 になることを確認できれば、あとは一発。
「差分で作れないか」という発想が鍵。
なぜその方針を選ぶのか
数列をそのまま「1+1+2+1+2+3+…」と足そうとすると、
何番目の数がいくつかを一つ一つ把握しなければならず、全体の構造が見えません。
「段(グループ)に分ける」という視点を持つだけで、問題が「三角数の和」という扱いやすい形に変わります。
「構造の発見」が算数の出発点。
20個の三角数(1, 3, 6, 10, …, 210)を全部足す方法は確実ですが、
①計算ミスのリスクが高い、②時間がかかる、という2つの弱点があります。
開成の試験では時間管理が勝負を分けるため、「正確で速い方法」を選ぶ意識が大切。
「足す対象が『何かの差』で書ける」なら、合計すると途中の項がすべて消えて計算が劇的に楽になります。
これは「掃き出し(望遠鏡のたし算)」と呼ばれる算数の重要テクニックです。
k(k+1)(k+2)÷6 という式は「三角数を差として持つ唯一の形」なので、
この形を知っているかどうかで解答速度が劇的に変わります。
「数n は第n段・第(n+1)段・…・第20段に登場するので、合計 (21−n) 回登場する」と考えると、
全体の和 = 1×20 + 2×19 + 3×18 + … + 20×1 と書けます。
この式は対称性があり(左右が鏡写し)、美しい構造ですが、
計算には n² の和が必要になり小学算数では重くなります。
差し引き法の方がシンプルで速い。
典型ミス
別解・解法まとめ
別解①:「数が何回登場するか」を使う方法
つまり数n の登場回数 = 21−n(21からnを引いた数)。
小学算数の範囲で計算するには工夫が必要です。
→ 「数列の構造を逆から読む」という発想力を鍛えるのに優れた別解。
別解②:直接計算(分割して丁寧に足す)
第2段:3
第3段:6
第4段:10
第5段:15
小計:35
第7段:28
第8段:36
第9段:45
第10段:55
小計:185
第12段:78
第13段:91
第14段:105
第15段:120
小計:460
第17段:153
第18段:171
第19段:190
第20段:210
小計:860
最速・最安全 差し引き法 → 20×21×22÷6=1540(一発計算)
確実・ミスしにくい 直接計算(5段ずつ小計)→ 35+185+460+860=1540
時間注意 一気に20個足す方法 → 計算ミス多発のリスクあり
差し引き法を知っているかどうかで解答時間が3〜5分変わる可能性があります。
開成で差がつくポイント
「グループ構造に気づく力」と「その和を効率よく求める計算力」の両方が問われています。
単に答えを出すだけでなく、「なぜその方法を選んだか」が明確に説明できることが開成のレベルです。
①「段(グループ)に分ける」を0.5秒で判断。
②「第k段の和 = k(k+1)÷2」を即書きする。
③「三角数の和 = 差し引き法で求まる」と直結し、
20×21×22÷6 を計算して終わり。
問題を見てから解答まで3〜4分。
①グループ分けに気づくが、20個の三角数を全部書き出して足そうとする。
②計算ミスで答えが合わず、2〜3回やり直す。
③時間切れ、または焦りから答えが「1430」「1550」などになる。
差し引き法を知らないだけで7〜8分かかることもある。
開成は「規則性の問題で計算量を減らす工夫」を必ず試みます。
「k(k+1)(k+2)÷6」という「3つの連続整数の積÷6」が差し引き法のカギになる式は、
今後の問題でも繰り返し登場します。
「この形が出たら差し引き法!」と体に染み込ませておくこと。
この問題から学ぶべきこと
この問題の本質
この問題の本質は「数列の構造を見抜いてから、効率よく和を求める」という2段階の力です。
「グループに分ける」という観察力と、「三角数の和=差し引き法」という計算の工夫の両方が必要です。
どちらか一方だけでは開成レベルには届きません。
他問題への応用
・「1, 1+2, 1+2+3, …」の数列の和(同じ構造)
・「k段目に k² 個のものが並ぶ」など、段の数が二乗になるパターン
・「差し引き法(望遠鏡のたし算)」が使える数列全般
・分数の和「1/(k×(k+1)) = 1/k − 1/(k+1)」に同じ差し引き法が使える
今後どう活かすか
① 「グループに分けて読む」を癖にする(規則性問題の基本中の基本)
② 「三角数の和 = n(n+1)(n+2)÷6」を自分の手で確かめて覚える
③ 「差し引き法」を他の数列でも試してみる(習熟が大切)
「差を使って和を求める」は算数最強のテクニックのひとつ。
今日この問題で身につけた発想は、今後10年使い続けられます。
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