速さの比から「同じ時間で何周か」を読む
──周回問題は「距離の比=周回数の比」で一発
ある池のまわりをAさんとBさんが同時に同じ地点から反対向きに歩き始めました。
AさんとBさんの速さの比は 3:2 です。
はじめて出会ったあともそのまま進み、Aさんが出発地点に戻ったとき、Bさんはちょうど池を8周していました。
- 条件① : 同時・同地点・反対向きに出発
- 条件② : A の速さ:B の速さ = 3:2
- 条件③ : A が出発点に戻ったとき B はちょうど 8 周
- 求めるもの : A は何周したか
【前提】この問題の構造を整理する
この瞬間、AとBは同じ時間だけ歩いています。
同じ時間に「それぞれが何周したか」を比べるので、周回数の比=進んだ距離の比=速さの比が成り立ちます。
同じ時間に進む距離の比 = 速さの比
時間が同じなら「距離の比=速さの比」。周回数も距離に比例するので「周回数の比=速さの比」【STEP1】「Aが出発点に戻る」とは何を意味するか
池を何周かしてスタート地点に戻るわけですから、A の進んだ距離は「池1周の整数倍」です。
B の周回数も整数(8周)であることが与えられています。これが方程式の材料になります。
【STEP2】周回数の比=速さの比 を使う
A と B は同じ時間(「A が出発点に戻るまで」)歩いています。
速さの比が 3:2 なので、進んだ距離の比も 3:2。
距離は「池の周回数×1周の長さ」なので、周回数の比も 3:2。
A の周回数:B の周回数 = 3:2
B が 8 周 → 比の 1 単位 = 8 ÷ 2 = 4
【検証】答えの整合性を確かめる
速さの比と周回数の比は一致するか?
A:B = 12:8 = 3:2 ✓ 速さの比と一致しています。
問題文の「はじめて出会う」条件との整合性
反対向きに歩くので、合わせた速さで 1 周分の距離を埋めたとき初めて出会います。
速さの比 3:2 → A は 3/5 周、B は 2/5 周進んだところで初めて出会う。これは矛盾なし。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 速さの比 | 3 | 2 |
| 同じ時間での周回数の比 | 3 | 2 |
| 実際の周回数(B=8周より) | 12 周 | 8 周 |
「池のまわり」「反対向き」「速さの比」→ 即座に環状の旅人算と認識。
しかし「何周したか」という問いを見た瞬間に、旅人算の「出会い回数」ではなく「進んだ総距離(周回数)」の問題だと切り替える。
「Aが出発点に戻ったとき」という時間の区切りがあるので、この瞬間を「終点」に固定して考える。
「反対向き」という条件は、実は最終的な答えに直接影響しない。
なぜなら「A が出発点に戻るまでの時間」は反対向きかどうかと関係なく、A の速さと池の周長だけで決まるからです。
「反対向き」は「はじめて出会う場所」を設定するためのヒントに見えるが、本問では出会い後もそのまま進むので、方向は周回数計算に不要。
この「条件の取捨選択」が初見での重要判断。
「同じ時間に進んだ距離の比 = 速さの比」 を周回数に適用する。
「池 1 周 = 一定の距離」なので、周回数の比=距離の比=速さの比という等式が成立。
これが見えた瞬間に「B が 8 周なら比の単位量を求めて A を出す」という計算ルートが確定する。
池を円として描き、出発点を 1 か所マーク。
A(速い・右回り)と B(遅い・左回り)の矢印を書く。
「A が 12 周、B が 8 周」のイメージを数直線または円の周に矢印で示すと確認しやすい。
池の円形図。出発点マーク、A(右回り)・B(左回り)の矢印、周回数のイメージ
「速さの比 → 周回数の比」 という変換を中心に、旅人算+比の複合として捉える。
「出会い回数」を求める問題とは別物だと認識することが初見の最大のポイント。
| 方針 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 速さの比=周回数の比(採用) | ◎最適 | 計算1ステップ。B=8周から単位量を求めるだけ。 |
| 出会い回数を先に求める | △遠回り | 出会い回数と周回数は別の話。この問題では出会い回数は不要。 |
| 池の周長を仮定して具体的に計算 | △可 | できるが周長設定に迷う。比だけで解く方が圧倒的に速い。 |
| 「反対向き」を重視して場合分け | ✕ | 「反対向き」は周回数の計算に不要。方向で迷うと時間を大幅にロスする。 |
Aが出発点に戻る時間はAの速さと池の周長だけで決まり、向きは関係ありません。
この「使わない条件を識別する」力こそが開成で問われる思考力の一つです。
進んだ距離の比 = 速さの比 = 3:2。
池 1 周を同じ長さ L とすると、周回数 = 進んだ距離 ÷ L なので、
周回数の比=(距離A/L):(距離B/L)=距離の比=速さの比。
この論理の流れを言語化できるかが開成合格者の証明力です。
速さの合計(3+2=5)を使った計算を始めてしまう。
→ 出会い時間の計算に入り込み、問われていない「出会い回数」を求め始める。
→ 整数にならないことに気づかずそのまま答えてしまう。
「A が 12 周したとき本当にスタート地点に戻るか」の確認をしない。
→ 整数周でなければこの論法は成立しない。本問は問題設定として整数になるよう設計されているが、
一般化するとこの確認が必須。
それを周回数の計算に組み込もうとして混乱する。
仮定:池の周長を 1(単位)とおく
A の速さを毎分 3、B の速さを毎分 2 と仮定する(比の値をそのまま速さとして使う)。
A が出発点に戻るまでの時間を求める
A が 1 周するのにかかる時間 = 1 ÷ 3 = 1/3(分)
A が n 周して戻るのにかかる時間 = n/3(分)
B の周回数を式にする
同じ時間 n/3 に B が進む距離 = 2 × n/3 = 2n/3
B の周回数 = 2n/3 ÷ 1 = 2n/3 周
B = 8 周 の条件を使う
2n/3 = 8
n = 8 × 3/2 = 12 周
A と B の速さの比は 3:2(互いに素)なので、A が出発点に戻る最小の周回数は 1 周(速さの比の分子)、
そのとき B は 2/3 周…これは整数でないので戻ってこない。
A が出発点に戻るのは A が整数周したとき。A が n 周するとき B は (2/3)n 周。
B が整数周するのは n が 3 の倍数のとき。最小は n = 3 → B = 2 周。
B = 8 周は、この基本パターン(A:3周、B:2周)の 4 倍 → A = 12 周
この考え方は「両者が同時に出発点に戻る最小パターン」を求めてからスケールする、という発想で、
難関校の周回問題全般に応用できます。
速い解法・本番おすすめ:メイン解法(周回数の比=速さの比)
「速さ 3:2 → 周回数 3:2 → B が 8 周なら A は 12 周」を 3 行で書ける。
計算量ゼロに近く、最速かつ最も説明しやすい。
ミスしにくい解法:別解(池の周長を 1 と仮定)
具体的な数値を使うので途中のズレに気づきやすい。
時間に余裕があるときの検算にも使える。
上級者向け:別解②(最小パターンのスケール)
「A:B が両方整数周になる最小単位を求める」発想は、B が整数周とは限らない応用問題で特に有効。
「反対向き・出会い」という旅人算の典型的な言葉に引っ張られず、問われていることを正確に特定し、必要な条件だけを使う力が問われています。「使わない条件を識別する」という引き算の思考が開成では問われます。
最大の差は「条件の取捨選択」です。「反対向き」「はじめて出会う」という条件に引きずられて出会い計算に入る受験生と、それを無視して「同じ時間・速さの比→周回数の比」に直結する受験生の差は、最終的に正答か誤答かで明確に出ます。
合格者は「求めるものは周回数→同じ時間→距離の比→速さの比」という逆算的な思考ルートを組み立てます。「何を求めるか → どの関係式が使えるか → どの条件が必要か」という順序で考えるため、不要な条件(反対向き)を自然に除外できます。
多くは「反対向き → 合計速さ → 出会い計算」というパターンに自動的に入り込み、「出会い回数」という不要な値を求めてしまいます。また「B が 8 周なのに A が 8 × 2/3 周と逆比をかける」という符号ミスも多発します。
開成はしばしば「問題文に余分な(または紛らわしい)条件を入れて、何が必要かを判断させる」出題をします。本問の「反対向き」「はじめて出会う」がまさにその典型。「この条件は最終的な答えに影響するか?」と立ち止まって確認する習慣が、開成受験で最も問われる姿勢です。
【本質】 この問題の本質は「条件の取捨選択と、距離・速さ・時間の比の適用」です。 「同じ時間に進む距離は速さに比例する」という基本原理を、周回問題に適用する訓練です。 さらに「問題文に書かれた条件をすべて使わなければならない」という思い込みを捨てる メタ認知力を養う問題でもあります。
【他問題への応用】
・「同じ時間に仕事をするとき、仕事量の比=速さの比」(仕事算)
・「同じ距離を進むとき、かかる時間の比=速さの逆比」(移動問題)
・「歯車が噛み合うとき、回転数の比=歯数の逆比」(歯車問題)
すべて「比例・逆比例の適用場面の判断」という同じ構造を持ちます。
【今後どう活かすか】 速さ・周回・仕事の問題を見たとき、まず「何が同じで、何が違うか」を整理する習慣をつけましょう。 本問なら「時間が同じ → 距離の比=速さの比」。 この「何が等しいか」を見つける思考が、難関校の応用問題すべてに通じる最強の武器です。 また「問題文の条件のうち、今回は何が不要か」を毎回確認する習慣をつけると、 開成特有の「引っかかり条件」に対する耐性が格段に上がります。
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