開成・灘・筑駒レベル 算数解説
問題2 速さ・距離・時間の融合問題
【前半:解説+初見での考え方】
方針決定力 / 条件整理力 / 思考の言語化
📋 問題
問題 2
A駅からB駅まで、太郎くんは毎分80mで歩きます。
行きは途中で5分休み、帰りは休まず毎分60mで歩いたところ、
帰りの方が10分多くかかりました。
A駅からB駅までは何mですか。
📘 通常解説
① 条件を整理する
まず問題に登場する数字と条件を表に整理します。「行き」と「帰り」で速さ・休憩・時間の3つが絡んでいることを確認しましょう。
| 速さ | 休憩 | かかった時間(合計) | |
|---|---|---|---|
| 行き | 毎分 80m | 5分あり | (歩いた時間)+ 5分 |
| 帰り | 毎分 60m | なし | (歩いた時間)のみ |
② 距離を文字で置く(「□m」と設定)
A駅〜B駅の距離を □m とします(小学生流の「□」を使います)。
行きの歩いた時間
= □ ÷ 80(分)
行きの合計時間
= □ ÷ 80 + 5(分)
← 5分休憩を足す
帰りの合計時間
= □ ÷ 60(分)
← 休憩なし
③「帰りの方が10分多くかかった」を式にする
「帰りの方が10分多い」とは:
帰り時間 − 行き時間 = 10
(□ ÷ 60) − (□ ÷ 80 + 5) = 10
④ 式を整理する
まず「−5」を右辺に移します:
□ ÷ 60 − □ ÷ 80 = 10 + 5 = 15
□ ÷ 60 − □ ÷ 80 = 10 + 5 = 15
左辺の通分をします。60と80の最小公倍数は 240 です。
□ ÷ 60 = □ × 4 ÷ 240
□ ÷ 80 = □ × 3 ÷ 240
□ ÷ 60 = □ × 4 ÷ 240
□ ÷ 80 = □ × 3 ÷ 240
よって:
(□ × 4 − □ × 3)÷ 240 = 15
□ × 1 ÷ 240 = 15
□ = 15 × 240 = 3600
(□ × 4 − □ × 3)÷ 240 = 15
□ × 1 ÷ 240 = 15
□ = 15 × 240 = 3600
⑤ 検算(必ず確認する!)
行き:
3600 ÷ 80 + 5 = 45 + 5 = 50分
帰り:
3600 ÷ 60 = 60分
帰り − 行き = 60 − 50 = 10分 ✓
答え
3600 m
🧠 初見での考え方(思考実況)
開成受験生として問題を開いた瞬間、まず何をするか?
以下を順番に「頭の中で声に出す」ようにして読む習慣をつけましょう。
以下を順番に「頭の中で声に出す」ようにして読む習慣をつけましょう。
【STEP 1】問題を”構造”で読む
「行き・帰り」という対称構造が見えた瞬間に、速さの比較問題 と分類する。
A→B と B→A は同じ距離、これが大前提。
A→B と B→A は同じ距離、これが大前提。
【STEP 2】「変わるもの」と「変わらないもの」を仕分ける
変わらないもの(固定)
A〜B の距離は行きも帰りも同じ。→ これを□とおく
変わるもの(条件の差)
速さ:80m/分 ↔ 60m/分休憩:5分あり ↔ なし
時間:行き ↔ 帰り(差が10分)
【STEP 3】「差」が出る理由を分解する
帰りが10分多くかかった原因は 2つ 混在している。
① 帰りは速さが遅い(60 < 80)→ 帰りの方が時間がかかる方向
② 行きは5分休憩がある → 行きの方が時間がかかる方向
この2つが「打ち消し合う」関係であることを意識する。直感で「帰りが遅いから時間がかかる」で終わってはダメ。
① 帰りは速さが遅い(60 < 80)→ 帰りの方が時間がかかる方向
② 行きは5分休憩がある → 行きの方が時間がかかる方向
この2つが「打ち消し合う」関係であることを意識する。直感で「帰りが遅いから時間がかかる」で終わってはダメ。
【STEP 4】方程式の立て方を決める
「距離 = 速さ × 時間」から 時間 = 距離 ÷ 速さ に変形して時間を文字で表す。
距離□を使って行きの時間・帰りの時間を書いて、差が10になるという式を立てる。
距離□を使って行きの時間・帰りの時間を書いて、差が10になるという式を立てる。
【タイムライン図をここに挿入】
行き:歩く時間(□÷80分)+ 休憩5分 / 帰り:歩く時間(□÷60分)を横軸で比較する図
行き:歩く時間(□÷80分)+ 休憩5分 / 帰り:歩く時間(□÷60分)を横軸で比較する図
【STEP 5】計算の見通しを立てる
「60 と 80 の最小公倍数 = 240」と瞬時に見て、
通分で□の係数の差が出る → 1/240 になる → □ = 15 × 240 で整数になる、という見通しを持つ。
計算量が少ないことを確認してから進む。
通分で□の係数の差が出る → 1/240 になる → □ = 15 × 240 で整数になる、という見通しを持つ。
計算量が少ないことを確認してから進む。
💡 初見でのチェックリスト
- 行き・帰りで距離は同じか? → YES、固定する
- 「差の原因」が1つか複数か? → 速さ差+休憩の2つ
- 文字は距離か時間か? → 距離□が一番シンプル
- 通分できる公倍数はすぐ出るか? → LCM(60,80)=240
── 後半(なぜその方針/典型ミス/別解/差がつくポイント)へ続く ──
開成・灘・筑駒レベル 算数解説
問題2 速さ・距離・時間の融合問題
【後半:方針・ミス・別解・差がつくポイント】
方針決定力 / 条件整理力 / 思考の言語化
🎯 なぜその方針を選ぶのか
なぜ「距離を□とおく」のか
行きも帰りも同じ距離を進むという”不変量”が距離。
この問題で「変わらないもの=距離」「変わるもの=時間・速さ・休憩」と仕分けると、 固定できるのは距離だけとわかる。
だから距離を□とおくのが最も自然な出発点になる。
この問題で「変わらないもの=距離」「変わるもの=時間・速さ・休憩」と仕分けると、 固定できるのは距離だけとわかる。
だから距離を□とおくのが最も自然な出発点になる。
なぜ「時間を□とおかないのか」
行きの時間を□とおくと、帰りの時間は速さが変わるので「□+10」とはならない。
速さが違えば同じ距離でも時間が変わる。時間は行き・帰りで独立して動く量なので、 片方を□とおいても他方を簡単に表せない。
→ 距離に比べて式が複雑になる=方針としてロス。
速さが違えば同じ距離でも時間が変わる。時間は行き・帰りで独立して動く量なので、 片方を□とおいても他方を簡単に表せない。
→ 距離に比べて式が複雑になる=方針としてロス。
なぜ「速さの比」ではなく「距離を文字」で解くのか
速さの比(80:60 = 4:3)を使う方法も存在する(別解参照)。
ただし、今回は「休憩5分」という絶対量の条件が含まれている。
比で考えると「5分」「10分」という絶対量をどう扱うかで詰まりやすい。
比は「絶対量がない問題」で最強。絶対量混じりなら文字の方が安全。
ただし、今回は「休憩5分」という絶対量の条件が含まれている。
比で考えると「5分」「10分」という絶対量をどう扱うかで詰まりやすい。
比は「絶対量がない問題」で最強。絶対量混じりなら文字の方が安全。
なぜ「帰り − 行き = 10」の式なのか(向きに注意)
「帰りの方が10分多くかかった」= 帰り時間 > 行き時間。
つまり 帰り時間 − 行き時間 = 10(正の数) となる。
「行き − 帰り = 10」と逆に立てると答えがマイナスになる。
この「差の向き」の確認が方針決定の肝。
つまり 帰り時間 − 行き時間 = 10(正の数) となる。
「行き − 帰り = 10」と逆に立てると答えがマイナスになる。
この「差の向き」の確認が方針決定の肝。
⚠️ 典型ミス
❌ ミス① 「帰りの方が遅いから時間がかかる」で止まる
「60m/分 < 80m/分 だから帰りが遅い → 帰りの方が時間がかかる」は正しい。
しかしそれだけでは行きの5分休憩を忘れる。
行きは休憩込みの時間が合計時間になるため、単純に「遅い方が時間がかかる」だけでは計算できない。
しかしそれだけでは行きの5分休憩を忘れる。
行きは休憩込みの時間が合計時間になるため、単純に「遅い方が時間がかかる」だけでは計算できない。
なぜ起こるか:「速さ」の大小だけに注目してしまい、休憩という別の時間要素を見落とす。
条件が2つ以上あるとき、必ずすべての条件を書き出してから式を立てる習慣が必要。
条件が2つ以上あるとき、必ずすべての条件を書き出してから式を立てる習慣が必要。
❌ ミス② 「帰り − 行き = 10」の向きを逆にする
「行き − 帰り = 10」と立ててしまうと、
□÷80 + 5 − □÷60 = 10 → 整理すると □は負の数になる。
□÷80 + 5 − □÷60 = 10 → 整理すると □は負の数になる。
なぜ起こるか:「10分の差」という数字だけ追って、どちらが大きいかを確認しないまま式を立てるから。
「多い − 少ない = 差」の基本を、常に問題文の言葉に戻って確認すること。
「多い − 少ない = 差」の基本を、常に問題文の言葉に戻って確認すること。
❌ ミス③ 行きの時間に休憩を入れ忘れる
行きの時間を「□ ÷ 80」だけで計算して、+5 を忘れる。
帰りとの差を式にするとき、5分のズレがそのまま答えのズレになる。
帰りとの差を式にするとき、5分のズレがそのまま答えのズレになる。
なぜ起こるか:「時間 = 距離 ÷ 速さ」という公式だけに引っ張られ、
「休憩は時間に足す」という操作を後回しにしてしまうから。
式を立てる前に「合計時間 = 歩いた時間 + 休憩時間」と言語化してから書く。
「休憩は時間に足す」という操作を後回しにしてしまうから。
式を立てる前に「合計時間 = 歩いた時間 + 休憩時間」と言語化してから書く。
❌ ミス④ 通分を間違える・最小公倍数を誤る
60 と 80 の最小公倍数を「120」や「480」と計算してしまう。
正しくは LCM(60, 80) = 240。
(60 = 2²×3×5、80 = 2⁴×5 → LCM = 2⁴×3×5 = 240)
正しくは LCM(60, 80) = 240。
(60 = 2²×3×5、80 = 2⁴×5 → LCM = 2⁴×3×5 = 240)
なぜ起こるか:焦りで 60×80 = 4800 を使ったり、120(÷2しただけ)で止まる。
通分は最小公倍数を使うことで計算が最もシンプルになる。 検算で確認する余裕を持つこと。
通分は最小公倍数を使うことで計算が最もシンプルになる。 検算で確認する余裕を持つこと。
❌ ミス⑤ 検算をしない
答えが出た後、行き・帰りの時間を実際に計算して差が10分になるか確かめない。
なぜ起こるか:「答えが出た=正解」と思い込むから。
開成の採点は答えだけでなく式・過程も見る。
検算で式ミスを発見できる。残り時間が1分でも検算は30秒でできる。必ずやる。
開成の採点は答えだけでなく式・過程も見る。
検算で式ミスを発見できる。残り時間が1分でも検算は30秒でできる。必ずやる。
🔄 別解
別解:速さの比を使って解く 比の活用
考え方
行きと帰りの速さの比は 80:60 = 4:3。
速さの比の逆数が時間の比(同じ距離なら)なので、
歩いた時間の比は 行き:帰り = 3:4。
速さの比の逆数が時間の比(同じ距離なら)なので、
歩いた時間の比は 行き:帰り = 3:4。
帰りの歩いた時間を 4△分、行きの歩いた時間を 3△分 とおく。
行きの合計時間 = 3△ + 5(分)、帰りの合計時間 = 4△(分)
行きの合計時間 = 3△ + 5(分)、帰りの合計時間 = 4△(分)
帰り − 行き = 10 より:
4△ − (3△ + 5) = 10
△ − 5 = 10
△ = 15(分)
4△ − (3△ + 5) = 10
△ − 5 = 10
△ = 15(分)
帰りの歩いた時間 = 4 × 15 = 60分
距離 = 60 × 60 = 3600m
距離 = 60 × 60 = 3600m
本番でおすすめの解法は?
🏆 本番おすすめ 別解(比)
別解の「速さの比→時間の比」の流れは計算量が圧倒的に少ない。通分の必要がなく、△=15 という一発の計算で終わる。
ミスが少なく、速い。開成本番の時間制限下ではこちらが有利。
🛡 ミスしにくい解法 通常解法(文字)
「距離を□とおく」方針は手順が明確で、式の意味が追いやすい。焦りやすい場面でも「距離÷速さ」という基本に戻れるので、初学者・練習段階ではこちらで確実に。
🏅 開成で差がつくポイント
この問題で本当に見られている力
単なる「速さの公式を使えるか」ではない。
「複数の条件(速さの差+休憩)が混在するとき、どう整理して1本の式に落とせるか」という
条件整理力と方針決定力が試されている。
「複数の条件(速さの差+休憩)が混在するとき、どう整理して1本の式に落とせるか」という
条件整理力と方針決定力が試されている。
✅ 合格者の整理
問題を読んだ瞬間に「変わらないのは距離」と気づき、□をおく。「差の原因が2つある(速さ差+休憩)」と明確に分けて式を立てる。
比の解法も頭にあり、どちらで解くか判断してから手を動かす。
検算まで含めて2〜3分で完答する。
❌ 不合格者がはまるポイント
「遅い方が時間がかかる」という直感で走り出し、式の向きをミスする。休憩5分を「足す場所」で迷う(行きに足すのか、差の式に足すのか混乱)。
通分で時間を使いすぎて後半の問題に影響する。
検算をせず、答えのズレに気づかない。
開成特有の思考ポイント
開成の速さ問題は「条件の多重性」が特徴。
単純な公式適用では解けないように、必ず「もう一つの条件」が潜んでいる。
今回の「休憩5分」がそれ。条件を数える→整理する→式にする、この3ステップを必ず踏む。
単純な公式適用では解けないように、必ず「もう一つの条件」が潜んでいる。
今回の「休憩5分」がそれ。条件を数える→整理する→式にする、この3ステップを必ず踏む。
「比で見るか、文字で見るか」を問題ごとに選択できる力が差をつける。
絶対量のみ → 文字。比のみ → 比。絶対量+比が混在 → 比に絶対量を後乗せ(別解の△の使い方)。
絶対量のみ → 文字。比のみ → 比。絶対量+比が混在 → 比に絶対量を後乗せ(別解の△の使い方)。
📚 この問題から学ぶべきこと
この問題の本質
速さ問題の核心は「距離・速さ・時間の三角形」ではなく、
「変わるものと変わらないものを仕分けて、変わらないものを固定して式を立てる」という思考の型。
この型は速さ以外のあらゆる問題(仕事算・旅人算・濃度算)にも共通する。
「変わるものと変わらないものを仕分けて、変わらないものを固定して式を立てる」という思考の型。
この型は速さ以外のあらゆる問題(仕事算・旅人算・濃度算)にも共通する。
他問題への応用
旅人算への応用
「出会う・追いつく」問題でも行き・帰りの距離(または合計距離)が固定量になる。
固定量を□とおく発想は同じ。
流水算への応用
川の流れで行きと帰りの速さが変わる問題も「距離は同じ」が出発点。
比で考える場合も同様の処理。
仕事算への応用
「仕事量は変わらない→全体を1とおく」という固定量の発想が同じ構造。
今後どう活かすか
速さ問題を解くとき、まず「何が固定量か」を声に出して確認してから式を立てる習慣をつける。
条件が2つ以上あるときは必ず書き出す。頭の中だけで処理しようとしない。
「比」と「文字」の両方で解けるようにして、本番で速い方を選べるようにしておく。
検算は「答えを問題文に代入して確かめる」まで。答えが出た=終わりではない。
🎓 合格への一言まとめ
- 「変わらないもの=固定量」を見つけてから式を立てる
- 差の原因が複数あるとき、すべてを書き出してから整理する
- 比で解く方が速い場面を見抜く力を鍛える
- 式の向き(どちらが大きいか)は問題文の言葉に戻って確認
- 検算は必ずセットで。それが開成合格者の「当たり前」
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