問題
問題5 開成最終問題
A町とB町を結ぶ一本道があります。太郎君はA町を、花子さんはB町を同時に出発し、それぞれ相手の町に向かって一定の速さで進みます。2人は出会った後も止まらず進み、相手の町に着いたらすぐに折り返します。
最初に出会ったのは出発後24分、2回目に出会ったのは出発後40分でした。
- 太郎君と花子さんの速さの比を求めなさい。
- A町とB町の距離が7200mのとき、それぞれの速さを求めなさい。
- 3回目に出会うのは出発後何分後ですか。
通常解説
この問題で起きていること(全体像)
太郎君と花子さんは、ふつうの「出会い算」のように1回だけ出会うのではありません。出会ったあとも進み続け、相手の町に着いたら折り返してまた歩き続けます。だから、2人は道の上で何度も出会うことになります。
ここで一番大事なのは、「2人の速さの和」は、どんな場面でも変わらないということです。太郎君が向きを変えても、花子さんが向きを変えても、2人合わせて1分間に進む距離(速さの和)はずっと同じです。この性質を使うのが、この問題の中心の考え方になります。
(1) 速さの比を求める
1
1回目に出会うまでに、2人合わせてAB間1つ分(道のり1本分)を進む
出発してから1回目に出会うまで、太郎君と花子さんは向かい合って進んできます。2人が出会うということは、
2人が歩いた距離の合計が、ちょうどAB間の道のり(これを①とします)になったということです。これは24分後の出来事でした。
2
「速さの和」は変わらないので、同じ時間で進む合計距離も比例する
2人合わせた速さ(速さの和)は出発してからずっと一定です。ということは、
同じ24分間が経つたびに、2人合わせてちょうど①ずつ進むということになります。
3
24分→40分の16分間で、2人合わせてどれだけ進んだか
1回目の出会いが24分、2回目の出会いが40分なので、その間は16分です。速さの和は一定なので、24分で①進むなら、16分では
① × 16/24 = ①× 2/3
だけ、2人合わせて進んだことになります。
ここで立ち止まって考える
「2人合わせて2/3①進んだ」というのは事実として分かりました。でも、これだけでは太郎君と花子さんの
速さの比はまだ分かりません。なぜなら、「合わせてどれだけ進んだか」だけでは、太郎君と花子さんそれぞれの分け前が分からないからです。ここからは、
2回目に出会う場所がどこなのかを、図を使って正確に追いかける必要があります。
【図をここに挿入:A町ーB町の一本道、太郎君とハナコさんの動きを示す図】
2回目の出会いの正体をつかむ
太郎君と花子さんの速さは違います(問題文に「一定の速さ」とあるだけで、同じ速さとは書いていません)。もし花子さんの方が速ければ、花子さんは太郎君よりも先に相手の町(太郎君から見るとA町)に着いて、先に折り返します。
つまり、2回目の出会いが「1回目と同じような正面衝突」とは限らないのです。花子さんが先に町に着いて折り返し、まだA町方向に向かっている太郎君に追いつく形(後ろから追いかける形)で出会う可能性があります。
図で確認すること
もし「2回目の出会い」が1回目と同じ正面衝突タイプなら、出会いの間隔はいつも同じ24分おきになるはずです(24分、48分、72分…)。しかし問題文では2回目が40分。24分おきではありません。
これは、どちらかが折り返しているサインです。
比で整理する(小学生向けのやり方)
太郎君の速さを①、花子さんの速さを□として、AB間の道のりを①と□を使って表すことを考えます。ですが、もっと見通しよく解くために、ここでは「1回目の出会いの位置」を使って整理します。
4
1回目の出会いの位置を比で表す
24分間で、太郎君はAB間のうち「太郎君の速さ」に比例した距離を進み、花子さんは「花子さんの速さ」に比例した距離を進みます。太郎君の速さと花子さんの速さの比を、
太郎:花子=a:bとすると、1回目の出会いの地点は、A町から測って全体のうち a/(a+b) の場所になります。
5
花子さんが先にA町に着くと仮定して、2回目の出会いを追う
花子さんの方が速いとすると(b>a)、花子さんは太郎君より先にA町に着きます。花子さんがA町に着くのにかかる時間は、AB間の道のり ÷ 花子さんの速さ です。AB間を①とすると、花子さんがA町に着くのは ①÷b(分)後。
そのあと花子さんはB町方向に折り返し、太郎君に追いつくことで2回目の出会いが起きます。
この先は「比だけで解く」より速い裏ワザ的な見方があります
実は、上のように一つひとつ場合分けして式を立てるよりも、もっとシンプルに「速さの比」を直接決める考え方があります。続きの「初見での考え方」で、開成受験生が実戦でどう図とにらめっこして比を決めるかを、実況形式で説明します。
初見での考え方
問題を見た瞬間、何に目がいくか
実況:開成受験生の頭の中①
「出会った後も止まらず進み、相手の町に着いたら折り返す」――この一文を読んだ瞬間、
「これは単発の出会い算じゃない、往復運動だ」と切り替える。ふつうの出会い算(1回出会って終わり)の感覚のまま解こうとすると、絶対に詰まる。
1
最初に注目するのは「24分」と「40分」という2つの数字の差
出会いの間隔が
24分→40分(差16分)であって、24分→48分(差24分)ではないことに注目する。もし2人の速さが同じくらいで、ずっと正面からぶつかり合うだけなら、出会いの間隔は毎回同じ24分になるはず。それがズレているということは、
「途中で誰かが折り返している」という情報がこの数字の中に隠れている。
2
何を固定するか:AB間の道のりを①とおく
速さも距離も分かっていないので、まず
AB間の道のりを①と固定する。これで「速さの和×時間=距離」の関係をすべて①を使った比の式で表せるようになる。数値(7200m)は(2)で使うので、(1)では一切使わない。
3
何を図にするか:横一本の道に2人の動きを描く
A町を左端、B町を右端とした一本の線を描き、太郎君は右向き、花子さんは左向きに進む矢印を引く。出会うたびに点を打ち、
「何分後」「どこで」を書き込んでいく。折り返しが起きたところで矢印の向きを逆にするのを忘れない。
【図をここに挿入:A町ーB町の道に、太郎君(右向き矢印)・花子さん(左向き矢印)の動きと、24分・40分の出会い点を書き込んだ図】
どの条件が重要か、何を比で見るか
実況:開成受験生の頭の中②
ここで立ち止まって考える。「2回目の出会いは、1回目と同じ“正面衝突”なのか、それとも誰かが折り返した後の“追いかけっこ”なのか」。これを決めないと図が描けない。
速さが違う2人なので、速い方が先に町に着いて折り返すのは自然な発想。だから「花子さんの方が速いと仮定して、花子さんが先にA町に着き、折り返して太郎君を追いかける」というストーリーを描いてみる。
4
「速さの和は一定」を使って、24分間隔で①ずつ進む基準を作る
1回目の出会い(24分)までに、2人合わせてちょうど①進んでいる。速さの和は変わらないから、
同じ24分が経つたびに、2人合わせて①ずつ進む。これは「2人がどんな向きに進んでいても」常に正しい、非常に強い性質。
5
「合計の進んだ距離」と「実際にどこにいるか」を分けて考える
24分→40分の16分間で、2人合わせて ①×16/24 = ①×2/3 進んだ。ここまでは前回確認した通り。
ただし、この「2/3」がそのまま2人の間の距離の変化を表すわけではない。なぜなら、片方が折り返していると、2人は「近づく」のではなく「同じ方向に進んで追いかける」関係に変わっているから。ここを取り違えるのが一番危険なポイント。
【図をここに挿入:花子さんがA町に到着して折り返す瞬間の、太郎君と花子さんの位置関係を示す図】
最終的にどの単元・どの考え方として処理するか
実況:開成受験生の頭の中③
整理すると、この問題は2段階に分かれる。
①出発〜花子さんがA町に着くまで:太郎君と花子さんが向かい合って進む「ふつうの出会い算」。
②花子さんが折り返した後:花子さんが太郎君を追いかける「追いつき算」。
「出会い算」と「追いつき算」が1つの問題の中で切り替わる――これが開成がこの問題で本当に試している力。
なぜその方針を選ぶのか
なぜ「速さの和が一定」という性質を最初に使うのか
太郎君と花子さんの速さはどちらも分かっていない。普通なら「速さを①、□とおいて式を立てる」と考えたくなるが、未知数が2つあると式も2本必要になり、見通しが悪くなる。「速さの和」は、向きが変わっても変化しない量なので、これを基準にすれば未知数を1つに減らして考えられる。これが、いきなり速さを文字でおかずに「①(AB間の道のり)」を基準にする理由。
なぜ「24分おきに同じ出会い方をする」と決めつけてはいけないのか
もし2人の速さが同じなら、2人は道のまん中で出会い続け、出会いの間隔はずっと一定になる。しかし、この問題では速さが違うとしか書かれていない。「24分、48分、72分…」という単純な等間隔を仮定してしまうと、40分という数字と矛盾する。矛盾が出た時点で「単純な周期ではない」と気づき、別の構造(追いつき)を疑う姿勢が必要。これは「計算で押し切る」のではなく、「条件と矛盾しないか検証する」という方針の選び方そのもの。
なぜ図を描くのか
この問題は、頭の中だけで「太郎が進んで、花子が進んで、折り返して…」と追いかけると、途中で位置関係を見失いやすい。図に書き出すことで、「いつ」「どこで」「どちらが」折り返したのかを、目で見て確認しながら整理できる。特に、出会いの種類(正面衝突か追いつきか)を取り違えないために、図は欠かせない。
なぜ「出会い算」と「追いつき算」を分けて考えるのか
1つの式で一気に解こうとすると、向きの変化(折り返し)をうまく式に反映できず、式が複雑になりすぎる。「向かい合って進む区間」と「同じ方向に進む区間(追いかけっこ)」を分けて、それぞれに合った考え方(出会い算は速さの和、追いつき算は速さの差)を使う方が、計算量も少なく、ミスも減る。これが、場合分けをする本当の理由。
別の考え方ではなぜ苦しいか
いきなり速さを①・□とおいて連立方程式的に解こうとすると…
「24分で出会う」「40分で出会う」という2つの条件を、いきなり太郎の速さ・花子の速さの文字式で表そうとすると、
2回目の出会いが正面衝突なのか追いつきなのかが分からないまま式を立てることになり、式の形を間違えやすい。図で先に構造(出会い算→追いつき算の切り替え)を確定させてから比に落とし込む方が、圧倒的に安全で速い。
典型ミス
ミス①:出会いの間隔を24分おきだと決めつける
どんなミスか
「1回目が24分だから、2回目は48分、3回目は72分」と機械的に計算し、問題文の「2回目は40分」という条件を見落とす、あるいは無視して進めてしまう。
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なぜそのミスが起こるか:多くの「2人が出会う」問題は、速さの和が一定であることから等間隔で出会う設定が多い。過去に解いた似た問題のパターンを無意識に当てはめてしまい、「速さが違うと、途中で折り返しが起きて間隔が変わる」という今回特有の構造に気づけない。
ミス②:2回目の出会いも「正面衝突」だと思い込む
どんなミスか
2回目の出会いの位置を、1回目と同じように「向かい合って進んできて出会った」場所として図に描いてしまい、実際は「花子さんが折り返して追いついた」場所であることに気づかない。
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なぜそのミスが起こるか:「2人が出会う」という言葉だけを見て、出会い方は全部同じだろうと思い込んでしまう。問題文の「相手の町に着いたらすぐに折り返す」という一文を、図を描く段階で反映し忘れると、このミスが起きる。
ミス③:「2人合わせて進んだ距離」と「2人の間の距離」を混同する
どんなミスか
24分→40分の16分間で「2人合わせて①×2/3進んだ」ことを、そのまま「2人の間の距離が①×2/3縮まった」と解釈してしまう。しかし、花子さんが折り返した後は、2人は近づいているのではなく、花子さんが太郎君を追いかけている(差が縮まる速さが「速さの和」ではなく「速さの差」になる)。
―――――――――――――――――――
なぜそのミスが起こるか:「速さの和」が便利な性質だと知っているからこそ、どんな場面でも速さの和で押し切ろうとしてしまう。「向かい合っている区間」と「同じ方向に進んでいる区間(追いかけっこ)」を区別せずに、ひとつの式で済ませようとすると起こる。
ミス④:太郎君と花子さんのどちらが速いか、最初に決めつける
どんなミスか
「先に折り返すのは太郎君だ」と根拠なく決めて図を描き進め、後で矛盾が出ても気づかず、間違った比のまま計算を最後まで進めてしまう。
―――――――――――――――――――
なぜそのミスが起こるか:「太郎君」が先に問題文に出てくるため、なんとなく太郎君を主役のように扱い、太郎君の方が速い・先に動くという先入観を持ってしまう。実際にどちらが速いかは、出会いの間隔のズレ方(24分→40分と、だんだん長くなっている)から判断する必要がある。
ミス⑤:(2)の比を使わず、最初から実際の速さで計算しようとする
どんなミスか
(1)で出した「比」を使わずに、(2)でいきなり7200mと24分・40分から連立方程式のように速さを求めようとして、式が複雑になり計算ミスを誘発する。
―――――――――――――――――――
なぜそのミスが起こるか:(1)と(2)を別々の問題だと捉えてしまい、(1)で求めた比を(2)でそのまま活用するという「小問同士のつながり」を意識できていない。中学受験算数では、小問の答えは次の小問の道具になることがほとんど。
別解
別解:花子さんの「歩いた距離の合計」に注目する解き方
通常解説では「正面衝突→追いつき」と場面を分けて考えたが、もっと短い道のりで(1)の比を出す方法がある。「歩いた距離の合計」に注目する解き方で、開成本番でも狙える速い解法。
1
2回目に出会う瞬間、2人は同じ場所にいる
あたりまえのことだが、ここがこの別解のスタート地点。
40分時点で、太郎君がA町から進んだ距離と、花子さんが「実際にいる位置」(A町から測って)は同じになる。
2
花子さんの「歩いた距離の合計」と「いる位置」の差は、ちょうど①になる
花子さんは速い方なので、40分の間にB町からA町まで①を歩き切り、そこからさらにB町方向へ折り返して歩いている。だから
花子さんが40分間に歩いた距離の合計は、「①(B町からA町まで)」+「A町から出会うまでの距離」になる。そして「A町から出会うまでの距離」は、太郎君がA町から進んだ距離とまったく同じ(同じ場所で出会うから)。
3
式にする
太郎君が40分で歩いた距離を「x」とすると、
花子さんが40分で歩いた距離 = ① + x
一方、同じ40分間なので、歩いた距離の比はそのまま速さの比(太郎:花子=a:b)になる。
花子さんの距離:太郎君の距離 = b:a なので、
(① + x):x = b:a
4
xをもう一つの式で表す
太郎君は24分でAB間①のうち a/(a+b) を進む(1回目の出会いの位置)。速さは一定だから、40分ではその40/24倍。
x = ① × a/(a+b) × 40/24 = ① × a/(a+b) × 5/3
5
2つの式をつなげて、比を求める
(① + x):x = b:a の関係に、xの式を代入して整理すると、
a:b = 1:4 という比が、図とこの2つの式だけで求まる。比をおいてからの計算は、6年生の文字を使わない式変形でも十分処理できる量。
本番でおすすめの解法
本番では、まず
通常解説のように図で「出会い算→追いつき算」の構造を確認し、それを使って計算するのが一番ミスしにくい。
時間に余裕があり、計算力に自信がある受験生は、この別解(歩いた距離の合計に注目する解き方)の方が式の本数が少なく、
速く解ける。ただし、「歩いた距離の合計」と「実際の位置」を混同しないよう、図で一度確認してから式を立てるのが安全。
速い解法とミスしにくい解法、どちらを選ぶべきか
開成は試験時間に余裕がない学校。
普段の演習では別解(歩いた距離の合計)も練習しておき、本番では自分が一番手が止まらずに描ける図のほうを選ぶのが現実的。両方を知っていること自体が、初見の問題に対応する力になる。
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