📐 問題3|立体と規則発見
1辺が12cmの立方体があります。
12本の辺をすべて少なくとも1回ずつ通り、
最後は出発した頂点に戻ります。
同じ辺を何回通ってもよいですが、進む長さができるだけ短くなるようにします。
このとき、アリが進む長さは全部で何cmですか。
立方体・8つの頂点・12本の辺
📖 通常解説
条件整理
| 項目 | 数 |
|---|---|
| 辺の数 | 12本 |
| 1本の長さ | 12cm |
| 頂点(かど)の数 | 8個 |
| 1つの頂点に集まる辺の数 | 3本 |
| 全部の辺を1回ずつ通った場合の合計 | 144cm |
辺は全部で12本、1本の長さは12cmなので、
12 × 12 = 144 cm
もし無駄なく1回ずつだけで全部の辺を通れるなら、答えは144cmになるはずです。
まずこの「理想の数字」を出しておくことが、この問題の出発点です。
ここで考えるのは、「1つの頂点を通るとき、辺は2本セットで使われる」ということです。
頂点に到着する辺が1本、そこから出発する辺が1本——必ずペアで使われます。
しかも今回は「出発した頂点に戻ってくる」旅なので、
スタート地点も「最初に出ていく辺」と「最後に戻ってくる辺」がペアになります。
つまり、8つの頂点すべてで、使う辺の本数は偶数本でなければならないのです。
ところが、立方体のどの頂点を見ても、集まっている辺はちょうど3本です。
3本のうち2本はペアを作れますが、残りの1本だけは相方がいません。
これが8個の頂点すべてで同時に起こってしまいます。
つまり、全部の辺をちょうど1回ずつ通るだけでは、つじつまが合わない頂点が8個もできてしまい、
1回ずつ・144cmでは歩き切れないことがわかります。
1つの頂点について、辺をもう1本分余分に通れば、
3本 + 1本 = 4本(偶数)
となり、つじつまが合うようになります。
ここで大事なのは、1本の辺を余分に通ると、その辺の両はしの2つの頂点が同時に解決するという点です。
1本の辺には頂点が2つ付いているので、1回の「追加」で2個の頂点を一気に直せます。
つじつまの合わない頂点は8個あります。
1本の追加で2個ずつ直せるので、
8個 ÷ 2個 = 4本
最低でも4本の辺を、もう1回ずつ余分に通す必要があります。
すべての辺の長さは12cmで同じなので、
選ぶ4本がきちんと8個の頂点をダブりなく分担できるかがポイントです。
立方体には、上の面と下の面をつなぐ「縦の辺」が4本あります。
この4本は、上の面の頂点1個・下の面の頂点1個をそれぞれ1組ずつ結んでいるので、
4本選ぶだけで8個の頂点をちょうど1回ずつ、もれなく・重なりなく直すことができます。
・縦の辺①:上の頂点と下の頂点のペアを解決
・縦の辺②:別の上下のペアを解決
・縦の辺③:別の上下のペアを解決
・縦の辺④:残った上下のペアを解決
→ これで8個の頂点が全部、矛盾なく偶数本になります。
全部の辺を1回ずつ 12本 × 12cm = 144cm
余分にもう一度通る4本 4本 × 12cm = 48cm
144cm + 48cm = 192cm
🧠 初見での考え方
開成を受ける子が、この問題を見た瞬間にどう考えを進めるかを実況してみます。
「立体」「辺をすべて通る」「同じ辺を通ってもよい」「最短」——
この組み合わせを見た瞬間、「一筆書き・規則発見」の単元だと判断します。
面積や体積を求める問題ではなく、歩き方そのものにルールがある問題だと最初に見抜くことが大切です。
12本×12cm=144cmと、ぱっと計算したくなりますが、
開成を受ける子は「本当にその通りに歩けるルートがあるか」を先に疑います。
長さの合計を出すことと、実際に歩き切れることは別問題だと気づけるかが最初の分かれ目です。
「歩けるかどうか」を確かめるために、頂点(かど)に何本の辺が集まっているかを数えます。
立方体ではどの頂点も3本——この「3本」という数字に注目できるかが重要です。
頂点を通るとき、入る辺と出る辺は必ずペアになります。
3本のように奇数本集まっていると、1本だけペアの相手がいなくなる——
この「ペアになる・ならない」という考え方を、図形の中に当てはめられるかがポイントです。
この問題は出発点に戻ってくるという条件付きです。
戻ってくる場合は、スタート地点も「出ていく辺」と「帰ってくる辺」がペアになるので、
例外なく、すべての頂点でペアが揃っている必要があると気づくことが大切です。
いきなり「どの辺をもう一度通るか」を当てずっぽうで探すのではなく、
「ペアの相手がいない頂点が何個あるか」→「最低何本の追加で直せるか」の順番で考えます。
この順番を守ると、計算がブレません。
① 単元を見抜く(一筆書き・規則発見)
② 「長さを足すだけ」を疑う
③ 頂点に集まる辺の数を数える
④ ペアになるかならないかで考える
⑤ 「戻ってくる」条件を見落とさない
⑥ 最低本数を先に決めてから計算する
🎯 なぜその方針を選ぶのか
12本×12cm=144cmという数字は、あくまで「全部の辺の長さを足しただけ」の数字です。
実際にアリが1本のつながった道として歩けるかどうかは、別に確かめないとわかりません。
計算と、実際に歩けるルートがあるかどうかは、いつも一致するとは限らないのです。
アリが頂点を素通りするとき、必ず「入る辺」と「出る辺」のペアを1組使います。
つまり、ある頂点を何回も通っても、その頂点で使う辺の本数はいつも偶数本になるはずです。
だからこそ、頂点に集まる辺の本数が奇数か偶数かを見れば、無理なく歩けるかどうかがわかります。
もし出発点に戻らなくてよいなら、スタートとゴールの2つの頂点だけは
ペアが1本足りなくても許されます(最初に出るだけ、最後に着くだけでよいからです)。
しかし今回は出発点に戻る条件があるため、スタート地点も最終的には出入りのペアが揃っている必要があり、
例外がいっさい許されません。この違いが、必要な追加距離の違いを生みます。
辺を1本選んで余分に通るたびに、その辺の両はしの頂点が同時に解決します。
もし頂点を1個ずつバラバラに直そうとすると、同じ頂点を何度も数えてしまったり、
無駄に多くの辺を選んでしまったりします。
「1本で2個まとめて解決する」という見方を持つことで、必要な本数の最低ラインがはっきり見えてきます。
立方体には頂点が8個、辺が12本あり、頭の中だけで「どの頂点が直っていて、どの頂点がまだか」を
追いかけるのはとても難しいです。
図に頂点を書き出し、直したペアに印をつけながら進めることで、
数え間違いや見落としを防ぐことができます。
⚠️ 典型ミス
辺の長さを単純に全部足しただけで満足し、「本当に歩けるか」を確認しないまま答えを出してしまうミスです。
「歩けるかどうか」を確かめる手がかりである、頂点に集まる辺の本数を一度も数えないまま、 なんとなく図をなぞって答えを出そうとするミスです。
つじつまの合わない頂点8個それぞれに、別々の辺を余分に用意してしまい、 本来4本で済むところを必要以上の本数にしてしまうミスです。
出発点に戻る必要があるのに、戻らなくてよい場合と同じように 「スタートとゴールは多少崩れてもよい」と考えてしまうミスです。
🔁 別解
別解:先に「最低必要な本数」を決めてから、辺の場所を考える
立方体の頂点は8個、すべて辺が3本ずつ集まっているので、
つじつまの合わない頂点 = 8個
1本の追加で頂点2個を同時に直せるので、
8個 ÷ 2個 = 4本
この時点で、まだ「どの4本か」を決めていなくても、最低4本必要ということだけは確定します。
すべての辺の長さが同じ12cmなので、本数さえ4本に決まれば、追加の距離は必ず48cmになります。
あとは8個の頂点をダブりなく分担できる組み合わせ(縦の辺4本など)を1つ見つければ完成です。
本番では、「先に最低本数を決めてから、場所を考える」この順番がもっとも安全です。
理由は、辺の長さがすべて等しいこの問題では、本数さえ決まれば追加距離はすぐに計算できるからです。
先に場所を探そうとすると、「足りているか」「無駄がないか」の確認が後回しになり、ミスに気づきにくくなります。
🏆 開成で差がつくポイント
辺の長さを足すという単純な計算力ではなく、
「本当にそのルートで歩けるか」を自分で確かめるルールを発見する力が見られています。
答えを当てずっぽうで探すのではなく、理屈で組み立てられるかが問われます。
合格者は、長さを足す前に頂点ごとの辺の本数を必ず確認し、 「つじつまの合わない頂点がいくつあるか」をはっきりさせてから、 最低限必要な追加本数を計算します。
多くの受験生は「全部の辺を足せば終わり」だと思い込み、144cmで止まってしまいます。
あるいは、なんとなく図をなぞって余分な辺を増やしすぎてしまい、192cmより大きい数字を出してしまいます。
開成の規則発見の問題は、「できるか・できないか」を理屈で説明する力と、
「できないなら、最低どれだけ工夫すればよいか」を順序立てて考える力の両方が試されます。
一方だけでなく、両方をつなげて考えられるかどうかが差を生みます。
📌 この問題から学ぶべきこと
① この問題の本質
「全部の辺を通れるか」は、辺の長さの合計ではなく、
頂点に集まる辺の本数のペアの作りやすさで決まります。
この「ペアになる・ならない」という見方が、一筆書き系の問題すべてに共通する核心です。
② 他の問題への応用
立体の辺だけでなく、平面の図形や道路網などでも、
「点に何本の線が集まっているか」を数えて歩けるかどうかを判断する問題は、
開成・灘・筑駒クラスの入試でくり返し出題されます。
この問題で身につけた「ペアで考える」発想は、形が変わっても同じように使えます。
③ 今後どう活かすか
新しい一筆書き系の問題を見たときは、まず点に集まる線の本数を数える習慣をつけましょう。
そして、「最低何本の工夫が必要か」を先に決めてから、具体的な場所を考えるという順番を守ること。
この2つの習慣が、初見の規則発見問題に対応する力につながります。
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