開成対策講座 第6講 問題2

池の周り・追いつき問題 解説(前半)

📘問題

問題2

AさんとBさんが同じ地点から同時に出発し、池のまわりを同じ向きに歩きます。

AさんとBさんの速さの比は 5:3 です。

AさんがBさんにはじめて追いつくのは、Aさんが池を何周したときですか。

答え Aさんが池を 5/2 周(= 2周半)したとき

📗通常解説

① 「追いつく」とはどういう状態か、まず確認しよう

AさんとBさんは同じ向きに歩いています。 同じ地点を同時に出発したので、最初は2人は並んでいます。

池のまわりなので、グルグルと同じコースをぐるぐる歩きます。 Aさんの方が速いので、だんだんAさんがBさんより前へ出ていきます。 そして Aさんが Bさんより 「池1周分だけ多く歩いた」 とき、 Aさんは後ろから追いかけて Bさんに追いつきます。

【図をここに挿入】
2人が同じ向きに池をぐるぐる歩くイメージ図

② 速さの比から「歩いた距離の比」を考える

同じ時間が経ったとき、速い人ほどたくさん歩きます。 時間が同じなら、歩いた距離の比=速さの比 になります。

Aさんが歩いた距離:Bさんが歩いた距離 = 5:3

たとえば、Bさんが3メートル歩くとき、Aさんは5メートル歩く、という意味です。

③ 「追いつく条件」を式にする

「追いつく」とは、 AさんがBさんよりも池1周分だけ多く歩いた状態 です。

池1周の長さを 1 とします(単位はどんな数でもOKです)。

Aさんが歩いた距離 − Bさんが歩いた距離 = 1(周)

④ 比を使って「何周か」を求める

Aさんが歩く距離を 5、Bさんが歩く距離を 3 とおきます(比の数字をそのまま使います)。

差は:5 − 3 = 2

この「2」が、池1周分にあたります。

Aさんが歩く距離は「5」なので、池1周(=2)に対して

5 ÷ 2 = 5/2 = 2.5周(2周半)

⑤ 確かめ

人物 歩いた距離(比) 池の周回数
Aさん 5 5 ÷ 2 = 2.5周
Bさん 3 3 ÷ 2 = 1.5周

2人の差:2.5 − 1.5 = 1周 ✓

Aさんはちょうど Bさんより 1周分多く歩いたので、追いついています!

これが「はじめて追いつく」瞬間です。

【答え】 Aさんが池を 2周半(5/2周) したとき

🧠初見での考え方

開成受験生が試験会場で問題を見た瞬間、頭の中でどう動くかを実況します。

🎙 思考実況①:問題を読んだ瞬間

「同じ向きに歩く」「速さの比が5:3」……これは「追いつき算」だ。 「反対向き」じゃないから「出会い算」ではない。すぐ分類できる。

「何周したとき?」という問いだから、距離は比のまま扱う方が楽。 実際の池の長さは出てこない。→ 池1周を「1」として、比で考えればいい。

🎙 思考実況②:「追いつく」条件を固める

「追いつく=差が1周分」というルールをすぐ思い出す。 池の問題では、追いついた瞬間にAはBよりちょうど1周多く歩いている

差が2周分になったら「2回目に追いつく」、3周分なら「3回目」……という構造も頭に描く。 でも今回は「はじめて」なので差=1周でOK。

🎙 思考実況③:比で計算する

速さの比 5:3 → 距離の比も 5:3(時間が同じだから)。

差は 5−3=2。この「2」が池1周に対応する。

Aさんは「5」歩いたとき追いつく。 池1周=「2」だから、A の周回数は 5÷2=2.5周

ここまで30秒以内で方針が確定する。あとは確認だけ。

注目すべき条件チェックリスト

「同じ向き」か「反対向き」か? 同じ向き → 追いつき(差が1周)。反対向き → 出会い(和が1周)。まず確認。
「同じ地点から同時に出発」か? はい → 最初は2人の差=0。条件がシンプル。
「池の長さ」は与えられているか? いいえ → 比のまま考える。池1周=1 と置けばよい。
「何周したとき?」という問い → 答えは整数とは限らない(2.5周もあり得る)と最初から覚悟する。

🔍なぜその方針を選ぶのか

「比で考える」のはなぜか?

池の長さが「300m」「500m」などと具体的に与えられていれば、 それを使って計算もできます。 でも今回は池の長さがありません。

だから 池1周を「1」と置いて比のまま計算する のが最も速く、 間違いが少ない方法です。

もし「池を300mと仮定して……」と考え始めると、 最後に「何周か」を求めるためにまた割り算が必要になり、 一度計算した手間がムダになります。 最初から「1周=1」と置けば、その手間がゼロになります。

「距離の差が1周=追いつく」はなぜ成り立つのか?

AさんがBさんの「真後ろ」からスタートし(同じ地点)、 同じ向きにぐるぐると回ります。

Aが速いので少しずつ前へ。 ある瞬間、AがBより1周分だけ多く歩いたとき、 池の形が「丸い」ので、Aは一周まわってBの背中に追いつきます。

これを 「直線に引き伸ばして考える」 と、 「Aが Bより 1周分だけ前にいる=追いついた」と理解できます。

【図をここに挿入】
池を直線に引き伸ばしたイメージ図(差が1周になる様子)

「時間を同じにする」と「距離の比=速さの比」になる、なぜか?

距離=速さ×時間 という公式はわかりますね?

2人とも 同じ時間だけ 歩いているので、

Aの距離 ÷ Bの距離 = (Aの速さ × 時間) ÷ (Bの速さ × 時間) = Aの速さ ÷ Bの速さ = 5 ÷ 3

時間の部分が約分されて消えるので、 距離の比=速さの比 が成り立ちます。 これが「比だけで全部解ける」根拠です。

池の周り・追いつき問題 解説(後半)

⚠️典型ミス

❌ ミス① 「速さの比」と「周回数の比」を混同する

速さの比が 5:3 だから、「Aが5周するときBは3周」と考えて
「Aが5周したとき」と答えてしまう。

「速さの比=周回数の比」は正しいのですが、 「追いつく条件=差が1周」を考えていないのが問題。 差が 5−3=2 で、これが「池1周分=2」に対応することを忘れてしまっている。 「比の数字をそのまま答えに使う」という安易なショートカットを選んでしまうのが原因です。
❌ ミス② 「はじめて追いつく」という条件を無視する

「差が何周になったとき追いつくか」をきちんと考えず、 なんとなく「差が1周=追いつく」「差が2周=また追いつく」という構造を理解していない。

「はじめて」という言葉を見落とすと、 たとえば「差が2周のとき(2回目)」を答えてしまうことがある。 「はじめて」=差がちょうど1周になる最初の瞬間、と読み取るクセをつけよう。
❌ ミス③ 「池の長さ」を勝手に決めて計算してしまう

「池の長さは300mとして…」と具体的な数値を設定し、 速さを「Aは毎分50m、Bは毎分30m」などと決めて計算する。 途中で複雑になり、「何周か」を求めるとき計算ミスが起きやすい。

具体的な数を使うこと自体は間違いではないが、 「比だけで完結する問題」に余分な数を持ち込むと計算量が増え、 ミスのリスクが上がる。問題に長さが与えられていないのは「比だけで解け」というサインと気づこう。
❌ ミス④ 「同じ向き」なのに「出会い算」の式を使う

速さの和を使って「1周 ÷(5+3)= 1/8」などと計算してしまう。

向きを確認せずに「和÷距離」という式を反射的に使ってしまうのが原因。 ・同じ向き → が1周になったとき追いつく
・反対向き → が1周になったとき出会う
まず「向き」を確認してから方針を決める習慣を持とう。
❌ ミス⑤ 「Bの周回数」を答えてしまう

Bさんが 3÷2=1.5周 と求まるが、これを答えにしてしまう。 問いは「Aさんが何周したとき」なので、Aの周回数 5÷2=2.5周 が正解。

計算の流れで Bの距離「3」から先に ÷2 をしてしまい、 その結果を答えと錯覚する。問題文の最後「Aさんが何周したとき?」を 計算に入る前にもう一度確認する習慣が必要。

💡別解

別解①:時間を「比の数」で表す方法

AとBの速さの比は 5:3。 池1周を距離「1」とする。

Aが池を 1周 するのにかかる時間を「1÷5=1/5」、 Bが池を 1周 するのにかかる時間を「1÷3=1/3」とする。

Aがちょうど n 周したとき、Bは何周しているか?

Aが n周する時間 = n × (1/5) = n/5
このとき Bが歩いた距離 = (n/5) × 3 = 3n/5 周

「追いつく」条件:AのほうがBよりちょうど1周多い

n − 3n/5 = 1
5n/5 − 3n/5 = 1
2n/5 = 1
n = 5/2 = 2.5周

→ Aが 2.5周(2周半) したとき、はじめて追いつく。

別解②:「単位時間あたりの差」で考える方法

単位時間(たとえば1分)あたり、AはBより
5−3=2 の距離だけ多く進む。

池1周=「5と3の差の何倍か?」を考える。

池1周分の差 ÷ 単位時間の差 = (5−3) ÷ (5−3) = 1

つまり、「差が2になる」のが1単位時間。そのときAが歩いた距離は「5」。 池1周=差の「2」なので、Aの周回数は 5÷2=2.5周

別解③:最小公倍数的な考え方(確認用)

A が1周する時間を3、Bが1周する時間を5(速さの逆数の比)とする。 *速さ5:3 → 1周にかかる時間の比は 3:5

経過時間(比)Aの周回数(÷3)Bの周回数(÷5)
313/52/5
626/54/5
939/56/5
15532

差が「2」(=池1周×2)になるのは時間15のとき。
でも「はじめて追いつく」のは差が初めて1周になるとき。
時間 15÷2=7.5 のとき差がちょうど1周=Aは 7.5÷3=2.5周

*この方法は確認に使えますが、表を作る手間がかかります。本番では別解①か通常解法が速い。

本番でおすすめの解法は?

最速・最安全 通常解法(比だけで解く)
速さの比 5:3 → 差は 5−3=2 → 池1周=2 → Aの周回数=5÷2=2.5周。
この3ステップで30秒以内に解けます。ミスが最も少ない。

確認用 別解①(方程式的な考え方)
検算したいとき、または「なぜ?」を確かめたいときに使う。

時間がかかる 別解③(表を作る)
整理には役立つが本番では時間が惜しい。理解を深めるための練習用。

🏆開成で差がつくポイント

この問題で本当に問われている力

🎯
「追いつく」を正確に定義できるか 「差が1周=追いつく」という本質を言葉で説明できるかどうか。 単に計算できるだけではなく、なぜそうなるかを理解しているか。
📐
比をそのまま使い切れるか 具体的な数値に変換せず、比の数字のまま最後まで計算できるかどうか。 この力が「場合分け」「整理」の速さに直結する。
👁️
「向き」を瞬時に分類できるか 同じ向き→追いつき、反対向き→出会い。この分類が反射的にできるか。 開成では1問に複数の条件が混在するので、分類のミスが命取りになる。

合格者と不合格者の違い

✅ 合格者はこう整理する
  • 問題を読んで「追いつき算」と即分類
  • 「比のまま」で全て処理する
  • 差 5−3=2 が「池1周」と気づく
  • 「Aの周回数を求める」と最後まで意識
  • 確認(検算)まで30秒で完了
❌ 不合格者が止まる場所
  • 「池の長さが書いてない…どうしよう」で止まる
  • 具体的な数を設定して計算が複雑化
  • 速さの比 5:3 をそのまま答えにしてしまう
  • 「Bの周回数」を求めてしまう
  • 確認をしない(ミスに気づかない)

開成特有の思考ポイント

開成の問題では、この問題を単純に出すことはまずありません。 この問題の構造(追いつき=差が1周)に、 「途中で速さが変わる」「複数人が同時に歩く」「池の形が違う」 などの条件が加わります。

だから「なぜ差が1周=追いつくのか」を言葉で説明できる状態にしておかないと、 条件が複雑になった瞬間に対応できなくなります。

「公式を覚えた」ではなく「原理から考えられる」ことが、開成で差がつく根本です。

📚この問題から学ぶべきこと

この問題の本質

追いつき問題の核心は 「差が1周になる=追いつく」 という理解。

そして「比だけで解ける」問題には、具体的な数を持ち込まないこと。 この2つが身につけば、池の問題の基本形はすべて応用できます。

他の問題への応用

「n回目に追いつく」問題 差が n周になるときを考える。Aの周回数は (5÷2)×n 周。 公式のように覚えるのではなく、差が n周になる時間を比で出す練習をしよう。
「速さが整数比でない」問題 速さの比が 7:4 なら差は 7−4=3。 A の周回数は 7÷3=7/3 周。分数でもそのまま計算できる。
「反対向きに出会う」問題 和が1周になるとき出会う。速さの比 5:3 なら、時間が同じとき和は 5+3=8。 Aの周回数は 5÷8 周で最初に出会う。→ 池問題の2大パターンをセットで理解しよう。
「途中で速さが変わる」問題(応用) AとBどちらかが速さを変えた場合、変わる前後で「差がどれだけ増えたか」を分けて計算する。 今回の「差が1周=追いつく」という考え方をそのまま延長するだけ。

今後の学習に活かす方法

暗記より理解 「追いつき算の公式」として丸覚えしないこと。 「なぜ差が1周になるのか」を友達や親に説明できるまで理解を深めよう。

比を使い切る 「比の問題には比で答える」。具体的な数値に変換する誘惑に負けないこと。

確認を習慣に 求めたA・Bの周回数を代入して「差がちょうど1周になるか」を必ず確認する。 この確認に10秒かける習慣が、ミスを大幅に減らす。

問題文を最後まで読む 「Aが何周か」「Bが何周か」「2人が出会う回数は」など、 問いの文末を最初に丸で囲んでから計算に入ること。

【最終まとめ】 速さの比 5:3 → 差は 5−3=2 → 池1周=差の「2」
Aの周回数 = 5 ÷ 2 = 2周半(5/2周)
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