開成対策講座 第3講 問題4

直方体の切断|開成レベル算数解説

直方体の切断|中点を通る平面

開成・灘・筑駒レベル対策|算数専門講師による思考力解説

📝 問題

縦8cm、横12cm、高さ20cmの直方体があります。

ある頂点Aから出る3本の辺の真ん中をそれぞれM、N、Pとします。

3点M、N、Pを通る平面で直方体を切断します。

(1)切り口の形を答えなさい。

(2)Aを含む小さい立体の体積を求めなさい。

(3)切り口の面積を求めなさい。

【図をここに挿入】
縦8・横12・高さ20の直方体。頂点Aから出る3辺の中点M・N・P

🔍 問題を解く前の整理

まず「設定」を図に落とし込む

頂点Aから出る辺は3本。その3本の辺の長さはそれぞれ縦8cm・横12cm・高さ20cm。
Mは縦辺の中点 → Aから4cm
Nは横辺の中点 → Aから6cm
Pは高さ辺の中点 → Aから10cm
中点どの辺の中点か辺の全長Aからの距離
M縦の辺8 cm4 cm
N横の辺12 cm6 cm
P高さの辺20 cm10 cm

📖 通常解説

(1)切り口の形

3点M、N、Pはそれぞれ異なる辺の上にある。
この3点を結ぶと、3本の線分MN・NP・PMができる。
3点を結んでできる図形は必ず三角形
「各辺が何cmか」を計算する。MとNは同じ面(底面)の上の点か?→ いいえ
Mは縦辺の上、Nは横辺の上にある。
MN・NP・PMは直方体の面を斜めに走る「空間の対角線」になる。
三辺の長さがすべて違う → 不等辺三角形(三角形)
答え(1):三角形

(2)Aを含む小さい立体の体積

切り口(三角形MNP)でできたAを含む小さい立体の形を考える。
頂点はA、M、N、Pの4つだけ。
面は4枚(底面=三角形MNP、残り3面=三角形AMN・ANP・APM)。
→ これは三角すい(四面体)
三角すいの体積を直方体から考える。
Aを頂点とし、AM・AN・APの3辺がたがいに垂直な「直角三角すい」になっている。
(なぜなら、縦・横・高さはそれぞれ直角に交わっているから)
直角三角すいの体積の公式
3辺がたがいに直角に交わる三角すいの体積は:

体積 = (辺①)×(辺②)×(辺③)÷ 6

※ なぜ÷6か:直方体を半分にすると三角柱(÷2)、さらに3分の1にすると三角すい(÷3)。合わせて÷6。
AM = 4cm、AN = 6cm、AP = 10cm を代入:

4 × 6 × 10 ÷ 6
= 240 ÷ 6
40 cm³
答え(2):40 cm³

(3)切り口の面積

切り口は三角形MNPで、空間の中に斜めに存在する三角形。
普通の「底辺×高さ÷2」では簡単に求められない(高さが斜めになるため)。
「3つの直角な面の面積」を使う特別な方法を使う。
空間三角形の面積を求める方法
A・M・N・Pのように「たがいに垂直な3辺から出発する三角形」は、
次の式で面積が求まる:

(面積)² = (正面の三角形の面積)² + (横の三角形の面積)² + (上の三角形の面積)²

ここで「正面・横・上の三角形」とは、M・N・PをAM・AN・APの方向に「影」として落としたときの三角形のこと。
Aを直角の頂点とする直角三角形3つを使う。
3つの直角三角形の面積を求める:

・底面の三角形(縦AM=4と横AN=6) → 4×6÷2 = 12 cm²
・正面の三角形(横AN=6と高さAP=10)→ 6×10÷2 = 30 cm²
・側面の三角形(縦AM=4と高さAP=10)→ 4×10÷2 = 20 cm²
それぞれを2乗して合計し、√(平方根)をとる:

12² + 30² + 20²
= 144 + 900 + 400
1444

√1444 = 38
(38² = 1444 を確認:38×38 = 1444 ✓)

面積 = 38 cm²
答え(3):38 cm²
直方体の切断|思考力解説(Part2)

🧠 初見での考え方|実況解説

問題を見た瞬間にやること

▶ 開成受験生の思考実況 「直方体の切断か。切断問題はまず図を描く。でも、M・N・Pが中点と書いてある。中点が3つ出てきたら…これは三角すいの問題じゃないかな。体積を求める設問がある。中点から出来る立体の体積は、直方体の体積と関係があるはず。まずAからM・N・Pへの距離を整理しよう。」
「頂点から出る3本の辺の中点」という言葉に反応する
→ これは「Aを頂点とする直角三角すい」が生まれる設定。
直方体の3辺は互いに直角なので、直角三角すいが確定
数字を整理する
縦8→中点4cm、横12→中点6cm、高さ20→中点10cm。
「4・6・10」という3つの数字がこの問題のキーナンバー
(2)体積を先に見る
体積を求める問題がある → 直角三角すいの公式「÷6」が使えそう。
公式を使う前提で、(1)の切り口が「三角形」であることを確認する。
(3)面積は「影の面積」の公式を想定する
空間三角形の面積はそのまま計算しにくい。
→ 「3面の直角三角形の面積の2乗を合計して√(平方根)をとる」方法を想定する。
√の計算がきれいになるかを最後に確認。

どの条件が重要か

重要な条件は「Aから出る3辺がたがいに垂直」という点。
これがあるから「直角三角すい」になり、体積の公式が使える。
また、「各辺の中点」という設定があるから数値が半分になり、計算がシンプルになる。

💡 なぜその方針を選ぶのか

(2)なぜ「÷6」の公式を使うのか

別の方法で苦しい理由:
三角すいの体積は「底面積×高さ÷3」でも求められる。しかし、三角形MNPを底面とすると、 その「高さ」(Aからの垂線の長さ)を求めるのが非常に難しい。空間の中での距離計算は 小学生には複雑すぎる。

÷6を使う理由:
Aから出る3辺がたがいに直角なので、「小さな直方体(4×6×10)」を作ることができる。 この小直方体を6個に分けると、その1つが求めたい三角すいになる。 だから4×6×10÷6という式になる。
【図をここに挿入】
4×6×10の小直方体を6等分すると三角すいが1個できる様子

(3)なぜ「影の面積」の方法を使うのか

普通の「底辺×高さ÷2」が使いにくい理由:
三角形MNPの3辺(MN・NP・PM)は空間の中を斜めに走っている。 底辺をMNとしたとき、Pからの高さ(垂線の長さ)を求めるには 空間内の複雑な計算が必要。小学生には難しすぎる。

「影の面積」を使う理由:
たがいに直角な3方向から三角形を「写真に撮る」と、それぞれ「底面・正面・側面」に 直角三角形が映る。この3枚の面積を使って元の面積が求まる。 計算が整数でできるので、ミスが減る。

なぜ図を描くのか

「切り口の形」は直感で決めずに必ず図で確認する。
直方体の切断問題では「平面がどこを通るか」を誤解するミスが多い。
図を描くことで「M・N・Pは3つの異なる辺の上」を視覚的に確認できる。

⚠️ 典型ミス

ミス① 切り口の形を「六角形」と答える
切り口が六角形になるのは「3点が辺の中点ではなく辺の内部にある場合」など、 異なる条件のとき。今回は頂点Aから出る3辺の中点だけを通る平面なので、 切り口は三角形(三角形MNP)のみ。
なぜ起こるか:直方体の切断問題は「六角形になる」印象が強いため、 条件をよく読まずに六角形と決めつけてしまう。問題ごとに「どの点を通るか」を 毎回確認する習慣が必要。
ミス② 体積を「直方体の体積÷6」で計算する(数値を間違える)
直方体全体は 8×12×20 = 1920 cm³。これを÷6すると 320 cm³。
正しくは、半分の辺(4・6・10)を使った小直方体 4×6×10=240 を÷6で 40 cm³。
なぜ起こるか:「直方体÷6」という式を覚えてしまい、 「どの直方体か」を考えなくなる。公式を使うときは「なぜこの数値を使うか」を 毎回確認することが大切。AM・AN・APの距離(4・6・10)がキーナンバー。
ミス③ 面積を求めるとき「3辺の長さ」を計算しようとする
MN・NP・MPの長さを計算し始める受験生が多い。計算すると√(平方根)が出てきて ヘロンの公式のような複雑な処理が必要になる。小学校の範囲を大きく超えてしまう。
なぜ起こるか:「三角形の面積=底辺×高さ÷2」を使おうとして、 まず辺の長さを求めようとする。しかしこの問題では「影の面積」を使う方が はるかに効率的。問題の特徴を見て「どの方法が楽か」を考える力が必要。
ミス④ √1444 が計算できない
√1444 = 38 を確認するには「38² = ?」を計算する必要がある。
38² = (40−2)² = 1600 − 160 + 4 = 1444 で確認できる。
または 38×38 を筆算で丁寧に計算する。
なぜ起こるか:平方根の計算に慣れていないと、 1444 が何かの2乗かどうか判断できない。 「大きな数の平方根」への対策として、 30²=900・35²=1225・40²=1600 を覚えておくと見当がつきやすい。
ミス⑤ 「影の面積の公式」で辺の長さではなく面積を2乗するのを忘れる
正しくは:(面積)² = 12² + 30² + 20²
誤った式:面積 = 12 + 30 + 20 (そのまま足してしまう)
なぜ起こるか:公式の「2乗して合計、最後に√をとる」という 手順の途中で2乗を忘れてしまう。 計算の手順をメモに書きながら進める習慣をつけると防ぎやすい。
直方体の切断|差がつくポイント・別解(Part3)

🔄 別解

別解①:三角すいを「大きな三角すい」から引く方法(体積)

考え方

直方体をAを通る対角面で切ると大きな三角柱ができる。 その三角柱からはみ出た三角すい3つを引く方法もある。 しかし、計算手順が増えるため÷6の公式の方が速い。 本番では÷6公式を迷わず使う。

別解②:「底面×高さ÷3」で体積を確認する

底面を三角形MNPとする方法

三角すいAMNPの体積は「底面積×高さ÷3」でも求められる。
底面=三角形MNP(面積38cm²)、高さ=AからMNPへの垂線。

垂線の長さ h とすると:38 × h ÷ 3 = 40
→ h = 40×3÷38 = 120/38 = 60/19 cm

この計算は逆算なので、体積(40cm³)と面積(38cm²)が求まった後に確認として使える。 本番では先に÷6で体積を求め、最後に確認する使い方が有効。

本番でおすすめの解法まとめ

(1)図を描いて三角形と確認。迷わない。

(2)÷6の公式(AM×AN×AP÷6)が最速・最もミスが少ない。

(3)「影の面積の2乗合計→√」の方法が唯一現実的な小学生向け解法。
12²+30²+20²=1444、√1444=38 の計算を丁寧に。

🏆 開成で差がつくポイント

この問題で本当に見られている力

① 立体の「見える化」力

直方体に切り口ができたとき、頭の中で立体を正確にイメージできるか。 「Aから出る3辺の中点」という文字情報を3次元の図に変換する力が試される。

② 公式の「なぜ」を理解しているか

÷6や影の面積公式を「公式として暗記」しているだけでは応用できない。 「なぜ÷6になるか」(小直方体を6等分)を理解しているかが差につながる。

③ 計算の見通し力

√1444=38 を「計算できるか」でなく「計算できると気づけるか」が重要。 38²≒1444 という見当をつけてから計算に入る受験生は時間をロスしない。

合格者と不合格者の違い

✅ 合格者の整理

・問題を見た瞬間に「三角すいだ」と気づく
・4・6・10というキーナンバーをすぐ出せる
・(1)→(2)→(3)の順で解法が頭に並ぶ
・÷6と影の面積を迷わず選べる
・√の計算で見当をつけてから計算する

❌ 不合格者のつまずき

・切り口を六角形と思い込む
・辺の長さ(MN・NPなど)を計算しようとする
・÷6を使うが「元の直方体」で計算する
・(3)で手が止まって諦める
・√1444 が求められない

開成特有の思考ポイント

「空間を平面に投影して考える」思考
影の面積の方法は、空間の問題を「3方向からの平面問題」に分解する考え方。 開成では「複雑な空間を整理された平面に落とし込む力」が繰り返し出題される。 この考え方を身につけると、他の空間図形問題にも応用できる。

📚 この問題から学ぶこと

この問題の本質

この問題は「直方体の切断」という形をしているが、本質は 「互いに直角な3辺をもつ三角すいの性質を理解しているか」。 Aから出る3辺が直角であることに気づいた瞬間に、 体積(÷6)・面積(影の公式)の両方が見えてくる。

他の問題への応用

  • 直方体の頂点から出る辺の「比例分割」問題(中点でなく1:2に分ける場合)にも同じ考え方が使える
  • 「空間三角形の面積」を求める問題では「影の面積の公式」が基本ツールになる
  • 「三角すいの体積を直方体から導く」思考は、複合立体の体積問題にも応用できる

今後どう活かすか

  • 直角三角すいが出てきたらまず÷6の公式を疑う
  • 空間三角形の面積は3面の直角三角形の面積の2乗を合計して√をとる
  • どちらの公式も「なぜその式になるか」を言葉で説明できるまで理解を深める
  • √の計算は、30²=900・35²=1225・38²=1444・40²=1600 の目安を覚えておく

📋 答えまとめ

(1)切り口の形:三角形
(2)Aを含む立体の体積:40 cm³
(3)切り口の面積:38 cm²
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