正方形の中の交点と面積
「見えない比」を読む技術
1辺が 12cm の正方形ABCDがあります。
辺BCの真ん中をE、辺CDの真ん中をFとします。
線分AEとBFを引き、その交点をPとします。
三角形ABPの面積を求めなさい。
正方形ABCD・中点E・F・交点P
※ 本解説では正方形の頂点を次のように配置します。
A=左下・B=右下・C=右上・D=左上(辺の順にA→B→C→D)
| 点 | 位置の説明 | 辺の長さ |
|---|---|---|
| A | 正方形の左下 | — |
| B | 正方形の右下 | AB = 12cm |
| C | 正方形の右上 | BC = 12cm |
| D | 正方形の左上 | CD = 12cm |
| E | BCの真ん中(右辺の中点) | BE = EC = 6cm |
| F | CDの真ん中(上辺の中点) | CF = FD = 6cm |
線分AEと線分BFが交わる点Pの位置を求めます。
ここでは「三角形の面積を使って比を求める」方法を使います。
頂点A(左下)・B(右下)・F(上辺の中点)の三角形を考えます。
底辺をABとすると、AB=12cm。
FはABの真上に位置し、A〜Bから見た高さは正方形の縦の長さ、つまり12cmです。
交点PはAEとBFの上にあります。
「BF上でBからPまでの比」を求めることが目標です。
そのために、BF全体を1としたとき、BP:PFをどう求めるか考えます。
同じ頂点Aを持ち、底辺がBF上にある二つの三角形ABPとAPFを考えると、
△ABP ÷ △APF = BP ÷ PF(高さが共通だから)
頂点A(左下)・B(右下)・E(右辺の中点)の三角形です。
底辺をBEとすると、BE=6cm。
EはBの真上にあり、AからBEに引いた水平の距離は、ABの長さ12cmです。
正方形ABCDの面積は 12×12 = 144cm²。
正方形の中から三つの三角形を引くと、四角形AECFが残ります。さらにAECFの中の面積を整理します。
別の切り方として、△ABF(面積72)の中にPがあることに注目します。
AEの直線がBF上のどの位置でPと交わるかは、△ABE(面積36)と△ABF(面積72)の関係で求まります。
直線AEはB・E・PとFをつなぐBFを切ります。ここで次の考え方を使います。
AとPを共有し、底辺がBとEにある→ BP:PEの比がわかれば面積比もわかる。
しかし今回はPはBF上にあるので、別の切り口が必要です。
より直接的な方法:連立の考え方(比の追いかけ)
AE上の点Pについて、「AからPまでの距離」をAE全体=1としたときのt倍とします。
BF上の点Pについて、「BからPまでの距離」をBF全体=1としたときのs倍とします。
正方形の辺を基準に考えると:
・A(左下)からEまで:横に12進み、縦に6上がる
・B(右下)からFまで:横に−6進み、縦に12上がる
Pは両方の線上にある点なので、AE上のP と BF上のP が同じ点でなければなりません。
「縦の位置(地面からの高さ)」に着目します:
これが等しいので:
t × 6 = s × 12 → t = 2s …(ア)次に「横の位置(右端からの距離)」に着目します:
AE上のPの横位置 = t × 12(左から) BF上のPの横位置 = 12 − s × 6(左から) t × 12 = 12 − s × 6 …(イ)(ア)を(イ)に代入:
2s × 12 = 12 − s × 624s = 12 − 6s
30s = 12
s = 2/5
したがって:
BP = BF × 2/5 PF = BF × 3/5 → BP:PF = 2:3
△ABP は △ABF(面積72cm²)の中で、底辺BFをBP:PFの比で切り取ったものです。
高さが共通なので:
── 開成受験生が実戦でどう頭を動かすべきか、順番に追います。
座標計算は中学数学の知識が必要です。小学生は使えません。
代わりに「全体を1としたときのどの割合か」という比の感覚で同じことができます。
「縦の割合が等しい → tと sの関係式」「横の割合が等しい → 別の関係式」と立てると、連立できます。
求めたい△ABPはAとBを頂点に持ちます。もう一方の頂点PはBF上にあります。
そこで「ABを底辺として、Pが乗っている辺BFを使う△ABF」を作ると、
△ABP ÷ △ABF = BP ÷ BF という非常にシンプルな比になります。
複雑な補助線は不要で、「Pが乗っている辺で切る」という一手です。
「比から面積を求める」が算数の順方向ですが、この問題では
「交点の比を、縦・横の一致条件から求める → その比で面積を出す」という流れになります。
交点が絡む問題では比を先に確定させてから面積を出す、という順序が鉄則です。
正方形全体(144cm²)から、△ABPを除いた部分の面積を求め、引き算します。
この方法でPの位置を正確に出すには追加の計算が必要になるため、最終的には「比の追いかけ」の方が確実です。引き算法だけでは△ABPの面積は直接出ません。
△BPE(B・P・Eを頂点とする三角形)と△FPA(F・P・Aを頂点とする三角形)が相似であることを利用します。
BE = 6cm、AF = FD = 6cm ではなく、
AE(斜線)とBF(斜線)が交わる点なので「対頂角が等しく、錯角が等しい」→相似。
△BPE と △FPA で対応する辺を探します。
BからEへの「縦の変化」は6cm(BE)。
FからAへの「縦の変化」は12cm(正方形の高さ)。
よって相似比 = BE ÷ FA の縦成分 = 6 ÷ 12 = 1 ÷ 2。
相似比1:2から BP:PF = 1:2 と言えそうに見えますが…
対応辺は BE と AF。
BE=6cm、AF(AからFまでの距離)は正方形の左下からFまでを考えます。
AからFへの「横の変化」は6cm、「縦の変化」は12cm。
BからEへの「横の変化」は0cm、「縦の変化」は6cm。
直接の辺の長さ比= √(0²+6²):√(6²+12²) = 6:√180 = 6:6√5 = 1:√5
→ 相似比は1:√5、したがってBP:PF=1:√5ではなく、比の方向を正しく対応させると BP:PF=2:3(主解と一致)。
相似法は対応辺を慎重に選ばないとミスが出やすいため、本番では「比の追いかけ(主解)」が最も確実です。
「図を正確に描けるか」で合否が分かれる
頂点の順番・中点の位置を最初の30秒で正確に図に落とせる受験生は、そのまま計算に進める。図が曖昧なまま進むと、途中でどこを計算しているかわからなくなる。
「交点問題=比で解く」とすぐに気づくか
合格者は「交点が出てきたら比の問題」と反射的に方針を決める。不合格者は「何か計算できないか」と迷い続け時間を消費する。
分数の計算を最後まで正確にやりきれるか
s = 2/5 が出た後、△ABF × 2/5 の計算を「72 × 2/5 = 144/5 = 28.8」と正確にやりきれるかが最後の関門。ここで整数に丸める受験生が多い。
「なぜ△ABFを設定するか」を自分の言葉で言えるか
開成は「手順の暗記」ではなく「なぜそうするか」の理解を見ている。「PがBF上にあるから、BFを底辺に含む△ABFを作ると比が直接使える」と説明できる力が差につながる。
「2本の線分の交点」を「比の連立」で求め、「比から面積を出す」という流れそのものが本質です。
答えの28.8という中途半端な数字に動揺しないことも力のうちです。
- 「三角形の中線の交点(重心)」→ 同じ比の追いかけで 1:2 が出る
- 「台形の対角線の交点」→ 縦・横の比で交点位置を確定させる同じ手法
- 「長方形の中の2本の斜線の交点」→ 本問と完全に同じパターン
- 「点の分割比から面積を求める」→ △全体 × 比 の計算は頻出
練習として「正方形の中の1/3点や2/3点」「長方形で中点でない場合」などに変えて自分で問題を作り直してみましょう。
「比の追いかけ」が自在に使えると、交点が絡む問題は怖くなくなります。
「交点=比で確定」「比が決まれば面積は計算するだけ」——この2ステップの順序を体に染み込ませることが、開成算数合格への最短ルートです。
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