速さ×時間=道のり を「比のかけ算」で処理する
──比を揃えてかけるだけ、の思考訓練
AさんとBさんが同じ道を歩きます。
Aさんが家から駅まで行く時間と、Bさんが駅から家まで行く時間の比は 3:4 です。
また、Aさんの速さとBさんの速さの比は 4:3 です。
- 条件① : A の時間:B の時間 = 3:4
- 条件② : A の速さ:B の速さ = 4:3
- 求めるもの : A の道のり:B の道のり
【前提】速さ・時間・道のりの関係をおさえる
道のり = 速さ × 時間
この公式を「比のかけ算」にそのまま使うのが本問の核心です実際の数値がわからなくても、比どうしをかけ算すれば道のりの比が求まるのが本問の急所です。
ただし「かけ算する前に比の基準を揃える必要がある」というのが唯一の落とし穴です。
【STEP1】与えられた比を整理する
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 速さの比(条件②) | 4 | 3 |
| 時間の比(条件①) | 3 | 4 |
| 道のりの比(求めるもの) | ? | ? |
【STEP2】道のりの比を「速さ × 時間」で求める
A の速さの比:4 、 A の時間の比:3
B の速さの比:3 、 B の時間の比:4
答えが 1:1 =「同じ距離」になったのは、問題設定として当然の結果とも言えます。
「答えが出た後に問題文に照らして確かめる」習慣が、開成では特に重要です。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 速さの比 | 4 | 3 |
| 時間の比 | 3 | 4 |
| 道のりの比(速さ×時間) | 12 | 12 |
「速さの比」と「時間の比」が与えられ、「道のりの比」を求める。
これを見た瞬間に 「道のり = 速さ × 時間」を比のまま適用する 問題だと気づく。
計算する前に「何の比が与えられ、何の比を求めるか」を整理することが第一手。
「同じ道を歩く」 → AとBの道のりは本来同じはず。答えのチェックに使える重要な一文。
時間の比 3:4 → 誰の時間が長いか(B が長い)を確認。
速さの比 4:3 → 誰が速いか(A が速い)を確認。
比の順序(誰が先か)を取り違えると答えが完全に変わるため、「A:B」の順を徹底管理する。
速さ・時間・道のりの3行、A・Bの2列の表を即座に書く。
与えられた比を埋め、空欄(道のり)をかけ算で求める。
表の作成が思考の整理そのものになっているのが速さ問題の特徴。
「速さの比が 4:3、時間の比が 3:4」は、両方とも A:B の順で統一されている。
基準が同じなので、そのままかけ算して道のりの比を出せる。
もし「速さは A:B で、時間は B:A の順」で書かれていたら、順序を揃えてからかける必要がある。
この確認を怠るのが最大のミスポイント。
「速さの比の複合計算」 として認識する。
比の単元+速さの単元が融合した問題で、どちらも単独では解けない。
「道のり=速さ×時間」を比に適用する、という思考の橋渡しができるかどうかを問う問題。
| 方針 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 比をそのままかける(採用) | ◎最適 | 2つの比をかけ算するだけ。計算量ゼロで答えが出る。 |
| 具体的な数値を仮定して計算 | △可 | できるが、仮の数値設定に迷うと時間をロスする。別解で後述。 |
| 公式に数を代入して計算 | ✕ | 実際の速さも時間も与えられていないため、そもそも数値がない。 |
「道のり=速さ×時間」という公式は、比でも成立するという性質があります。
そのため、比どうしをかければ道のりの比が直接出ます。
「実数化しないと計算できない」という思い込みを捨てることが、この問題の方針決定の核心です。
どの比が誰のものかを取り違えるリスクが高まります。
表に書くことで「行(量の種類)× 列(人物)」の二次元管理ができ、ミスが激減します。
速さ問題で表を即座に書く習慣は、開成・筑駒レベルの必須スキルです。
A の時間を 4、B の時間を 3 として計算してしまう。
→ A の道のり:B の道のり = 4×4:3×3 = 16:9 という誤答が出る。
A:B = (4+3):(3+4) = 7:7 = 1:1 と出す。
偶然答えは合うが、根拠が完全に間違っている。
仮定:A の速さを毎分 4 m、B の速さを毎分 3 m とおく(速さの比 4:3 に合わせる)
A の時間を求める
時間の比が A:B = 3:4 なので、A の時間を 3、B の時間を 4 と仮定する。
道のりを計算
A の道のり = 4(速さ)× 3(時間)= 12
B の道のり = 3(速さ)× 4(時間)= 12
道のりの比
A:B = 12:12 = 1:1
速さの比が 4:3 のとき、同じ道のりを進むなら時間の比は逆比の 3:4 になります。
本問では時間の比がまさに 3:4 = 速さの逆比になっています。
これは「AとBが同じ距離を進んだ」ことを直接示しています。
→ 道のりの比は 1:1
※「速さと時間は逆比になる(道のりが等しい場合)」という命題を理解していれば、
計算なしで瞬時に答えを出せます。
速い解法・本番おすすめ:別解②(逆比の観点)
「速さの比が4:3、時間の比が3:4 → 逆比になっている → 道のりは等しい → 1:1」
を瞬時に判断できれば最速。ただし根拠を説明できなければ部分点も危うい。
ミスしにくい解法:メイン解法(表を作ってかけ算)
表に書いて速さ×時間を各人で計算する手順は確実。検算も容易。
「なぜ1:1か」を答案に一言添えると完璧です。
「道のり=速さ×時間」という公式を比の世界で使いこなす力が問われています。公式を「数値の計算道具」としか見ていない受験生と、「比でも適用できる普遍的な関係式」として理解している受験生の差が直接出る問題です。
最大の差は2点。①比の順序管理(A:Bで揃っているか確認するか)、②答えの妥当性検証(「同じ道」という条件から1:1が正しいと確信できるか)。どちらも「丁寧さ」ではなく「思考の習慣」の問題です。
合格者は問題文を読んだ直後に表を描き、A:Bの順で比を並べ、かけ算の列を空欄にして埋めるという処理を自動的に行います。「逆比になっている」ことにも気づき、答えを瞬時に予測してから計算で確認します。
多くは「実際の速さや時間がわからないから計算できない」と思考が止まるパターン、または比の順序を取り違えて 16:9 などの誤答を出すパターンです。「比のまま計算できる」という発想の転換ができないことが根本原因です。
開成はしばしば「答えが意外にシンプル(1:1)」な問題を出します。これは受験生が「答えが綺麗すぎる、ミスかも」と疑って計算し直す時間のロスを誘う罠でもあります。問題文の「同じ道を歩く」から1:1が必然だと論理的に確信できる力、これが開成が求める思考力です。
【本質】 この問題の本質は「公式は比でも成り立つ」という認識の転換です。 「道のり=速さ×時間」は実数でも比でも成り立ちます。この普遍性を理解すれば、 実際の数値がなくても答えを出せます。さらに「速さと時間の比が逆比 → 道のり一定」という 逆比の応用まで見えると、一問を多角的に捉える力が育ちます。
【他問題への応用】
・「仕事量=作業速度×時間」でも同じ構造の問題が出る(仕事算)
・「食塩の量=濃度×食塩水の量」でも同様に比で処理できる(食塩水)
・「面積=底辺×高さ」の比版も同じ(面積比問題)
すべて「かけ算の公式は比でも成り立つ」という一つの原理から派生します。
【今後どう活かすか】 速さ・仕事算・食塩水など、「かけ算の公式」が絡む問題を見たら、まず「比のまま計算できないか?」と問いかける習慣をつけましょう。 実数化しようとして迷子になるより、比のまま処理できれば計算量が大幅に減ります。 また、比を扱うときは必ず「A:Bの順で揃っているか」を確認する癖を今すぐつけること。これだけで本番のミスが激減します。
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